2012年6月8日金曜日

MATECOレポート 【十人素色-決定の論理 その2】

MATECOレポート第二弾は、『十人素色-決定の論理-』にご登壇頂いたサインデザインの八島紀明氏のレクチャーについて、です。
誘導・案内という機能を持つサイン計画が、環境や空間に対しいかに細やかな配慮を必要とする仕事であるか、たくさんの事例を交えご紹介いただきました。

レポートその1と併せて、ご高覧頂ければ幸いです。


Vol.02 「サインデザインの決定の論理」 八島デザイン事務所 八島紀明氏

「十人素色‐決定の論理」は多分野の方からのお話しがとてもいい刺激になりましたが、いくぶん刺激が強すぎて消化するのに時間がかかってしまいました。
八島さんは論理的にデザインの仕事をする方で、プレゼンテーションからもその姿勢が伺えました。
冒頭でサイン計画とは・情報とは、を再定義し、そのロジックの上にサインデザインという仕事を構築なさっているようでした。
また同じく冒頭での「花がなぜ目立つのかというのは、花びらの造形と色彩のみならず、背景のグリーンとの関係性によって花びらが風景の中から立ち上がるから」という説明がとても印象に残っています。

仕事の上で、デザイナーが完成させるのは形ある「モノ」だけれど、本質的に大切なのは「モノ」と「モノ」との関係性なのだな、と思いました。

後のお話で、その土地に内在する風景色を引用しサイン計画を検討した例は、図と地のバランスの中で色がとても印象的に整えられていました。
それは沖縄のプロジェクトだったのですが、その場において主役になる色が別のところにあるとき、意図的に背景になるようなカラーリングを考える等、周辺環境との関係性を踏まえたデザインの工夫がなされていました。
一部には琉球ガラスを用いたサインが展開され、その土地の歴史と文化を汲むことにより、モノとしてのデザインを離れ、沖縄という土地とデザインとが互いに共鳴しているように感じられました。

モノだけではなく関係性が大事、というのはサイン計画のみならず、建築、プロダクト、平面上のデザインなど多岐において通ずる話だと思います。

例えば、人がまちを歩いているとき、たった1つの建物だけでそのまちの印象が決まるのではありません。そうではなくて、建物同士がつくるまち並み、街路樹、人の声、果ては天気や自分の身体感覚などに影響され、その人の、そのまちに対する印象が決まります。

なにかをデザインする時は、自分の専門領域にだけ目が行きがちですが、デザインを受け取る側の人からすれば、○○デザイン、□□デザイン、というような世界の分断の仕方をしておらず、むしろそれらが織りなす複雑な関係性を知覚しているのだな、と思います。

また、モノとモノとの良好な関係性を構築する上で、色彩が重要な要素の1つになるのではないか、と感じました。
デザインが完成して、それでデザイナーの仕事が完了するわけではなく、そのあとも残り続ける「モノ」のことを考え、見届け続けることも建築家やデザイナーの責任なのだとも思いました。



●レクチャラープロフィール
八島紀明 / TOSHIAKI YASHIMA
1970 三重県鈴鹿市生まれ
1994 法政大学法学部法律学科卒
1995 - 1996 ホテルインターコンチネンタル東京ベイ フロントマン
1996 - 1998 菜々六工房
1998 - 2000 株式会社 びこう社
2000 - 2001 株式会社 イリア
2002 - 2009 有限会社 井原 理安デザイン事務所
2009 株式会社 八島デザイン事務所設立
ソニー本社ビル(ソニーシティ)サイン計画 (SDA賞 入選)/東京ミッドタウン サイン計画 (SDA賞 入選)等、受賞歴多数。
 
●レポート執筆担当
藤原由智 / YOSHITOMO FUJIWARA
武蔵野美術大学造形学部 基礎デザイン学科三年。
考えるのもつくるのも好きです。
最近は「風土性/土地性、とデザイン」をキーワードにいろいろ考えています。
「日本的なデザインとは」「土地固有の文化とは」など。
大学の先生の指導のもと、茨城県笠間市のデザインプロジェクトに参加しています。

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